成人したばかりの様子の若い衛士

寵愛者様！お久しぶりです、お声をかけて頂いて光栄です。
この前の御前試合、僕は三回戦まで勝ち上がっていたのですが、ご覧になられましか？
あ、観ていらっしゃいませんでしたか。
いいえ、何にも構いません！寵愛者様のお目に留まるよう僕が、精進してゆくだけの話なんです。
グレオニーさんのお話ですか？
以前は少し、僕からお聞きになりましたね。
やっぱりグレオニーさんを護衛につけるというのが、寵愛者様の今のご検討なのでしょうか？
ああ、護衛にするしないのお話ではないのですか、今日は。
グレオニーさんが寵愛者様のことをどう思っているのかは、申し訳ありません。僕は存じておりません。
でも、だいぶ仲良くされていますよね。
寵愛者様は、グレオニーさんのことを気に入っていらっしゃるんでしょうか。
でも、僕は護衛ってやっぱり実力がなくては務まらないと思います。
優勝まで、あと一歩ですから。
去年、成人したばかりですが、ここまで来ています。頑張りますので、是非。
あ、もう、お行きになられますか。
はい。良かったらまたお話させてください。


長身で少し格上の衣裳を身に着けた衛士

候補者様。こんにちは、ご機嫌も宜しいようで。
私に何かご用でしょうか。
グレオニーのお話ですか……。
候補者様。私は正直、貴方とあいつのご関係は、あまり好ましくは思っておりません。
貴方があいつにどのような感情をお持ちか、私は正確にはわかっていないのかもしれませんが、貴方は神の寵愛を授かったお方です。
どのような立場であるか、おわかりになっていらっしゃいませんか。
貴族と衛士、ましてや寵愛者と平民出の衛士なぞ、到底近く触れ合うことはできないとお思いになりませんか。
そうですか。いいえ、多くのお言葉は要りません。
貴方はこちらへ来て、本当に適わぬ立ち位置であるということを実感する機会もなく、まだ存じ上げないのだと思います。
余計な期待も、余計な想いも、傷つくのは双方です。
貴方にもグレオニーにも、私は傷ついて欲しくはありません。
どうか、おわかりになって頂きたいと、私は強く思います。
貴方の正しいご判断を期待しております。
それでは、失礼致します。


軽薄そうな雰囲気の衛士

おや、あんたがわざわざ私のとこに話に来るなんて珍しい。
グレちゃんの話？面倒だね。
どうしてわかるって、顔にかいてあるよ。あんたらは、揃いも揃ってわかりやすい。
グレちゃんがあんたをどう思ってるかねぇ、私はグレちゃんから直接は全く聞いたことがないから知らないな。
あら、もう行くの？諦めが早いね。
……私からの客観的な評価で良かったら教えてあげるよ。
はー、戻ってくるんだ。
速かったねえ、藁にでも縋りたいくらいか。
素直で良いこった。その素直さは、きっとあんたのためになるでしょうよ。
早く言えっていうのね。
そんなにカリカリしてちゃあ、聞けるものも聞けないよ寵愛者様。
私は煩くしているつもりは無いね。
まだまだ年を食っていない寵愛者様には、人のお話を聞き入れるお時間があるでしょう。何にも知らないお坊ちゃんのあんたは、もっと色んな人の話に耳を傾けるべきだと思うんだがね。
はいはい、そのお話を聞きにきたと。あんたのほうが煩い気がするな。
ありゃ好きでしょ、あんたにベタ惚れ。
私の言葉を信用できないの？じゃあなんで聞いたかね。
お似合い、お似合い。今のところは、とってもね。
あんた口ばっかりは達者だね、そこんとこはグレちゃんに似てない。
将来あんたの側にいる人間は貴族階級で妥当、平民階級なんて無理無理。
そういうご身分だね、候補者様っていうのは。
はあ？無いね、私の身分でも寵愛者様のお側なんて恐れ多くて近づけや致しませんよ。
今はどうしてお話してあげてるかって言ったら、あんたは子供で、城にも慣れてないのがありありとわかるんだから、舐められてるに決まってんじゃない。
あんた、自分がまだ子供で、甘やかされてるっていうのもわかってるんでしょう？
私もそうだね、甘やかしてさしあげておりますよ、寵愛者様。
ほらほら向こうにフェルツが帰ってきてるよ、あっちのほうが知ってんじゃない。


彼の親友の衛士

こんにちは、レハト様。今はあいつ巡回ですよ。もうすぐ帰ってくる時間だと思いますけれど。
その時間を狙って話を聞いて回ってるんですか？
あー、浮足立ってるのが何人かいました。みな、寵愛者様のことは気にしていますよ。
俺には何のご用でしたか。
ああ、あいつが寵愛者様のことをどう思っているかですか。
それは見ていればわかりそうなもんですが。あいつ、自分に正直ですから。
見てもいまいちわからないから俺に聞いてるんですね。
そうですね、あいつは寵愛者様のことは本当に好ましく思っていますよ。
俺以外まともな回答寄越さなかったんですか。ご期待に応えられて良かったです。
訓練してても、仕事してても……あ、仕事中に他のこと考えてるのはあんまり良くないですけどね、本当は。
頭のどこかしらでは、寵愛者様のことを考えていると思いますよ。
俺は相部屋ですから、どうしてもあいつの様子をよく見ることになりますから。
え、羨ましいですか。
そうですね、えー、寵愛者様と衛士が相部屋には、残念ながらなれないと思います。
将来、寵愛者様が衛士になられましても、同室にはならないかと。
ええ、そうですね。
寵愛者様……レハト様も、我々と同じような身分でしたら、きっとあいつも貴方も苦労しないで幸せだったのでしょうね。
俺も貴方とこうして話せているものですから、感じませんよ。貴族方と同じような壁は。
それでも適わないことというものはレハト様もお分かりになっていますものね。
そう、気落ちなさらないでください。
あいつは……貴方の側に立とうとしますよ、きっと。
慰めに聞こえましたか？そうでしたら、申し訳ありません。
俺の言葉が信じられなくとも、あいつの言葉は信じてあげてやってください。
貴方が想っていてくださるのであれば、あいつも決めると思うので。
何を決めるかですか。
それはあいつが、自分で言葉にすると思うんで、待ってあげてくださると嬉しいです。
俺がこういうことをあいつより先に申し上げてしまったことは、どうか内密に。
申し訳ございません、お願い事ばかり言って。
あ、帰ってきたみたいですよ、グレオニー。
はい。あいつもレハト様をお待ちしてますよ、では。